依存症コラム 依存症について知ろう「回復の広場」

依存症全般

依存症の診断について

掲載日:2019年11月14日
投稿者:小林 桜児

 精神科医がある人のことをアルコール、薬物、ギャンブル依存症であると診断を下す際、一つの目安となっているのが、診断基準です。世界中で、アメリカ精神医学会が定めたDSMと、世界保健機関が定めたICDの2種類が幅広く用いられています。DSMは学会や学術論文で用いられることが多く、逆にICDは行政文書で頻用されています。どちらも似ているところが多いものの、微妙な違いもあります。DSMは2013年に最新の第5版(DSM-5)が出版され、すでに日本語版も出版されています。ICDも2018年に最新の第11版が公表され、現在各国で翻訳と適用準備が進んでいるところです。ここでは2019年10月時点で最新のDSM-5にもとづいてご説明します。

 アルコールと薬物の依存症は、DSMではまとめて「物質使用障害」と呼ばれています。物質の種類が違っても診断基準の中身は同じ11項目で、最初の9項目は要するに(1)薬物を「使う、使わない」、アルコールを「飲む、飲まない」のコントロールが効きにくくなっていて、生活上何らのトラブルが物質使用によって生じていると「わかっちゃいるけど、やめられない」状態かどうか、について様々な角度から問うものです。最後の2つの項目は、(2)最初の頃と比べて同じ感覚を味わうためにどんどん摂取量を増やす傾向が見られること(耐性)や、(3)依存物質の使用を止めたり量を減らしたりしようとすると、その物質の本来の作用とは逆の症状が出現すること(離脱)の有無を確認しています。

 DSMの規定によれば、以上11項目中、いずれか2項目以上が最近1年以内に認められれば、診断が確定することになります。診断基準にはどこにも血液検査の結果や物質使用量、頻度など、具体的な数字は規定されておらず、すべて「多くの」「大量に」「問題が起こり」などといった「主観的」「文学的」な表現しかありません。何を以て「多い」「大量」「問題」と定義するかについては、つまり実際に診断を下す過程では、ある程度、精神科医自身の文化社会的価値観が反映されざるを得ないのです。

 ギャンブル依存症は今回DSMの第5版になって初めてアルコールや薬物と同じ「依存症」のカテゴリーに分類されることになりました。それまでは賭博癖と呼ばれ、抜毛症などと同じく、漠然と「衝動制御の障害」に分類されていました。内容は9項目からなり、基本的に物質使用障害と似ていますが、「苦痛な気分」が依存症的行動を誘発する引き金として挙げられていることはギャンブルが初めてで、画期的なことと言えるでしょう。その他、負けを取り戻すために賭博を続ける、周囲に賭博を隠すため嘘をついたり借金の依頼をしたりする、といった項目が含まれていることは、ギャンブルならでは、と言えます。

小林 桜児 氏

神奈川県立精神医療センター

神奈川県立精神医療センター 依存症診療科 医師