みくるべ病院の依存症治療
掲載日:2023年05月01日
投稿者:みくるべ病院
アルコール依存症者は強迫的な欲求から再飲酒を繰り返し、一人では酒がやめられません。飲酒問題を家族が注意すると、「オレは大丈夫だ」などと自分に都合のいい解釈ばかりで、周りの苦労が治療に結び付かないことが良くあります。依存症治療は医療スタッフが関わることはもちろん重要ですが、それだけでは不十分で、同じ辛さを持った当事者同士が共通の目標に向かっていくことが大切です。そのため当院では「節酒」ではなく「断酒」(薬物依存症者は「断薬」)を目標に依存症者が集団治療を行います。
個人での治療は必要ですが、それだけだと自分のルールで物事を考えるようになりがちで、なかなか飲酒問題と向き合えません。そのため当院ではできる限りアルコール/薬物依存症者を同じ病棟に集め、男女混合で治療を行います。入院前は他人の目を避け、隠れ飲酒をしていた生活が、入院後はシラフで他人と交流する生活になります。大人数での治療は慣れないためストレスが掛かりますが、あえて不自由な生活をすることで、自分以外にも様々な飲酒問題を抱えた仲間がいることを知り、依存症の怖さや辛さを共有する機会が増えます。軽症者を集めただけではその重篤さがなかなか伝わらず、病識の獲得に繋がりにくいため、重症者やそのとき困っている依存症患者をスピーディーに積極的に受け入れることで集団治療の維持に努めています。そのため任意入院だけでなく、医療保護入院での受け入れも行っています。
なお依存症者は楽な方に流れやすく、中途退院が一人出ると「オレも、オレも」となってしまうため、最後まで治療をやり切ることを目標にしています。それを達成することで退院後に自助グループに繋がる可能性が初めて出てきます。
また原則第4土曜日に行われる家族会では、毎月30名程の当事者、家族が参加し、新しく繋がった依存症者とその家族を救おうと、それぞれの思いや体験を正直に話してくれます。今後も依存症で困った人たちを救い続けるために、手間と時間をかけて依存症治療を行っていきたいと思っています。
みくるべ病院 依存症プログラムリーダー 山木克昭