依存症コラム 依存症について知ろう「回復の広場」

アルコール

アルコール依存症の患者さんの再飲酒を防ぐ要因―依存症専門外来での3年後予後調査を通して

掲載日:2023年09月08日
投稿者:神奈川県立精神医療センター

神奈川県立精神医療センター臨床研究部臨床研究室 板橋登子

神奈川県立精神医療センターの依存症専門外来および依存症研究室では、初診した患者さんがその後どのような経過をたどるのか、依存物質を手放すことや手放せないことに影響する要因はどのようなことかを把握し、最適な治療や支援のありかたを検討するために、長期予後調査を行いました。今回は、2015年5月~2018年4月に初診された患者さんの3年後予後調査(調査期間:2018年5月~2021年4月)から、特にアルコールの問題で来院されたかたがたの断酒予後と影響因について簡単にご紹介します。

 アルコールの問題で来院された患者さんは、予後調査に同意をしてくださった369名のうち、6割にあたる223名(男性170名、女性53名)と連絡をとることができ、調査に回答していただくことができました。初診から3年の間で、一番長くお酒を止め続けた期間は、平均13.0ヶ月、3年間止め続けた人は32名(14.3%)でした。初診から3年の間で見てゆくと、ある時期に断酒を始めてから75%(4分の3)の人たちが断酒を継続できる期間が1ヶ月、50%(半数)が断酒を継続できる期間が6ヶ月、25%(4分の1)が断酒を継続できる期間が24ヶ月という、概ね先行研究に近い結果でした。治療に訪れ、1ヶ月の断酒ができたこと、半年の断酒ができたということは、とてもよく頑張っているということが見て取れます。

 再飲酒に影響を及ぼす要因を検討したところ、再飲酒を防ぐ要因は、「(当院を初診するより前に)依存症専門治療を受けた経験があったこと」「自助グループに参加していた期間が長いこと」「当院に通院した期間が長いこと」でした。再飲酒のリスクになる要因は「自傷行為もしくは自殺未遂の経験があったこと」でした。これらの要因は一つだけでなく、相互に関連して影響しており、多くの治療的な関係に、長い期間身を置いていることが重要になりそうです。

この結果が、アルコールの問題を抱えている方々には「いろいろな治療や支援の場につながっていることは、再飲酒を抑えることにきっと役に立つ」というメッセージになればと思います。そして、治療者や支援者には、「断酒ができないから治療や支援をしない」のではなく、「仮に本人が断酒できない(またはその意思がない)としても、多くの治療や支援の選択肢があって、本人が行ってみようと思える場を提供できる」ことが望まれます。院内や院外の治療的な資源を活用できる体制を充実させて、「死にたい」を行動化せずにいられるような関わりを提供できる、それが課題といえるかもしれません。

 なお、今回の調査結果は断酒を指標としましたが、アルコール依存症の患者さんの回復の指標は必ずしも断酒が唯一というわけではありません。今回の調査結果も治療的関係の重要さが窺われましたが、「どれだけ断酒ができるか」だけではなく、「どれだけ安心・信頼できる他者や集団と良質の対人関係を結べているか」にも着目していきたいと思います。

(引用文献は下記の通り)
板橋登子, 小林桜児, 黒澤文貴, 西村康平:物質使用障害患者における初診3年後の断酒断薬予後―アルコール,違法薬物,処方薬市販薬の乱用物質別による断酒断薬継続期間への影響因の検討― .精神神経学雑誌,124(8): 515-532, 2022

神奈川県立精神医療センター

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