依存症コラム 依存症について知ろう「回復の広場」

アルコール

アルコール依存症の治療プログラムのご紹介

掲載日:2024年03月01日
投稿者:国立病院機構 久里浜医療センター

国立病院機構久里浜医療センターは、全国140病院を運営する我が国最大の医療グループである国立病院機構に属する医療機関で、神奈川県横須賀市に位置しています。眼下には穏やかな野比海岸が広がり、東には房総半島の連山を望み、南には三浦半島南端の剣崎灯台を展望し、海と山に恵まれた景勝の地にあります。気候は温暖で、都会の喧騒を離れてゆったりと療養するには最適な環境です。

当センターは、昭和16年横須賀海軍野比分院として創立され、昭和20年厚生省に移管され、国立病院として発足しました。昭和38年に国立医療機関として初めてアルコール専門病棟を設置し、昭和64年にはWHO(世界保健機関)から日本で唯一のアルコール関連問題研究・研修協力センター施設として指定されました。平成29年から厚生労働省より依存症対策全国拠点機関に指定され、国内の依存症に携わる医療機関や行政機関の関係者に対して研修、情報発信等を実施するなど、わが国を代表する依存症の専門治療機関として、日々臨床・研究・人材育成に取り組んでいます。また、うつ病、統合失調症、認知症をはじめとする一般精神科及び一般内科、便秘外来、歯科を有する医療機関でもあります。本コラムでは、当院を代表する診療部門である、アルコール依存症の治療についてご紹介します。

当院ではアルコール依存症の患者様の状態に応じて、外来通院、入院治療を提供していますが、依存症までに至らないものの、飲酒してよく記憶をなくす、物を失くすなどの問題を感じている、飲酒習慣を見直したい、断酒には抵抗を感じる、などという方向けに、「減酒外来」をご案内し、幅広い相談のニーズに対応しています。受診された方にはアルコールの使用に関する重症度の判定に基づき、新たな飲酒習慣の目標設定や具体的な対策を話し合います。適応を満たせば、お酒を減らすための減酒薬の処方も可能です。

また、アルコール依存症の新たな治療プログラムとして、マインドフルネスを取り入れています。マインドフルネスはセルフケアの一つの方法で「いかなる判断もせずに『今、この瞬間』に注意を向ける」ことを基本とし、ストレス低減法として様々な場面で実践されています。アルコール依存症の治療においても、マインドフルネスは飲酒への渇望(飲みたいという強い欲求)のコントロール等にも用いられており、飲酒習慣の改善効果が示されており、①「山の瞑想」、②「呼吸瞑想」、③「ボディスキャン」の3つの瞑想について、当院オリジナルで作成した音声ガイドを用いながら行います。瞑想の実践の後には、どんな感覚が生じたかを参加者でシェアしています。参加者の皆さんの体験を聞くと「呼吸に注目することで心が落ち着いた」「ネガティブな考えが瞑想をしているうちに弱まって、消えていった」「悪い考えを消そうとして余計に気になっていたけれど、自然と消えていくものだと気づいた」「瞑想が終わった後はスッキリした」など、思考に振り回されない落ち着いた心を作る体験がマインドフルネスの実践を通して聞かれています。ストレスによる苦しみ、また飲酒への衝動に巻き込まれることから自身を遠ざける取り組みとして、マインドフルネスの実践が役立っているようです。

このように、当院では依存症治療に関する新しい知見を取り入れながら、日々診療にあたっています。依存症は正しいケアとサポートを受けることによって回復することができます。ご自身あるいは周りに依存症でお困りの方がいらっしゃいましたら、まずは最寄りの医療機関や当センターに相談してみてください。

国立病院機構 久里浜医療センター 氏

国立病院機構-久里浜医療センター

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