依存症コラム 依存症について知ろう「回復の広場」

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依存症の方の食生活改善について

掲載日:2021年03月03日
投稿者:神奈川県立精神医療センター

1.食べ物と栄養素の関係について
① 昨日は、何を食べましたか?
 依存症患者様の栄養相談では、下記の食品群に全部にチェックがつく方はほとんど、いらっしゃらないです。
ご飯、 □パン、 □めん、 □肉類、 □魚類、 □貝類、 □卵、 □牛乳、乳製品
□大豆製品、 □色の濃い野菜、 □色の薄い野菜、 □海藻類、 □芋類、 □果物
② 食品群と栄養素
 食品群ごとの役割、豊富に含まれる栄養素は下記の表になります。

おもに体の組織をつくる おもに体の調子を整える おもにエネルギーになる
魚・肉・卵

豆・豆製品

牛乳・小魚

海藻

緑黄色野菜 その他の野菜

きのこ類、果物

穀類・いも類

砂糖

油脂

 

たんぱく質 無機質 カロテン ビタミン 炭水化物 脂質

例えば、たんぱく質は、身体の中でアミノ酸に分解されます。アミノ酸は約20種類ありますが、その中で体内合成されない9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といいます。必須アミノ酸を多く含む良質なたんぱく源は、魚、肉、卵などの動物性たんぱく質です。植物性たんぱく質の豆・豆製品は、アミノ酸組成が異なるので動物性、植物性と偏らずに摂取することが大切です。同じ食品群の中でも食品ごとに含まれる栄養素や含有量が異なります。
「いろいろな食品をバランス良く」と栄養士が指導する理由は、種類を多く、異なる食品を組み合わせて食べることで自然と栄養的価値が高まるからなのです。

2.依存症の方にみられる不足しがちな栄養素
 依存症の患者様の食生活上の課題は、アルコールや薬物などに支配されてしまい、健康維持のための食生活の継続が難しくなっていることです。また、元来より野菜や果物、乳製品などを日常的に摂取する食習慣がなかったという方もめずらしくありません。
依存症の患者様は、欠食や偏った食事内容によって、全ての栄養素が不足しがちになります。特にアルコール依存症の方の場合には、食べずに酒を飲むという極端な食習慣が長期間に及ぶため、代謝により需要の高まるビタミンB群の欠乏が心配なケースが多くみられます。末梢神経炎やウェルニッケ脳症などを引き起こすことにつながるため、軽視できません。カルシウムも欠乏がみられる栄養素です。将来的な骨粗鬆症のリスクも高くなる心配があります。薬物依存症の方の場合には、欠食やどか食いなど量的に極端な食行動がみられるケースが多く、当院の調査結果では、肥満傾向が顕著にみられています。
依存症の方は、潜在的な低栄養状態に加えて食道や胃・腸や肝臓、腎臓を酷使している可能性があるため、脆弱性を考慮しながら回復を目的にした栄養管理を始める必要があります。なお、当院の依存症病棟の入院患者では、脂質異常症、糖尿病、慢性膵炎、肝硬変などの身体合併症をすでに併発している患者様が多く、重症化を防ぐために特別食の給食提供、管理栄養士による食事療法の指導が必要になります。

3.焦らず、ゆっくりと。。。自分スタイルを目指す
 実際の栄養相談では、いきなり完璧な食事を目指すことは、おすすめしません。ケースバイケースですが、段階的にすすめていきます。生活リズムの整えにあわせて、朝、昼、夕の一日3回のタイミングに何かしら口にすることから開始します。ヨーグルトやバナナ、コーンフレークと牛乳など手軽な食品を手にとることからでも十分です。食欲を取り戻すことが第一歩になります。
体力がついてきたら、次のステップは食事内容の改善です。いろいろな食品をバランス良くといっても“いろいろ”や“バランス”という言葉は、患者様にとっては、どうしたらいいのか戸惑うこともあるようです。定食スタイルをイメージして主食、主菜、副菜のパターン化をおすすめしますが、最終的には患者様それぞれの自分スタイルに落ち着いていきます。
具だくさんの豚汁などは、たんぱく源の豚肉、根菜類の野菜が入るので、おにぎりと豚汁だけでもバランスの良い献立になります。ビタミンB群を豊富に含む豚肉、鮭、納豆、豆腐、卵などの食品を積極的に取り入れることや、1日2食や一回の食事量が少ない方に対しては、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素が不足しがちになるため、主菜を肉のみの茶色一色ではなく、色とりどりの野菜やきのこ類を足して炒めるなど、色の数が三つ以上になることをアドバイスしています。

 

 

神奈川県立精神医療センター

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